作品解説
中西伶《landscape17》
2026年10月16日

2026年6月23日、美術家の布施琳太郎氏がキュレーションする「すごい指」展(WALL_alternative、東京・西麻布)に行った。デジタルとアナログの境で「触れること」を模索する若手作家を集めた展示だったが、会場に足を踏み入れた瞬間、奥の壁を埋める巨大な平面に目が惹かれた。それが今号の表紙を飾る《landscape17》である。印刷では再現できないが、実際に目にすると表面には細かな凹凸が走り、ブラッシュストロークと思しき形象が逆に削られたりしていて、なにが図でなにが地なのかがわからなくなる。その幻惑はむかし親しんでいた岡﨑乾二郎を思い起こし、また全体の印象は梅沢和木のデータベース絵画にも通じるような気がして、すぐに打診を決めた。本誌表紙では作品の一部しか使われていないので、できればどこかで現物を見てほしい。
作家の中西伶氏は1994年生まれ。弊社でいう「y世代」にあたる。筆者は無知で知らなかったのだが、大手ブランドのキーヴィジュアルを担当するなどすでに斯界では注目を浴びている。ストリートカルチャーとデジタルツールを自在に行き来する創作姿勢はまさに新世代。緑のなかに赤が乱舞する画面がいかにも日本的と思われたが、実際はゴーギャンへのオマージュだったらしい。それでも強引に日本特集と関係づければ、富士山の麓に魅力的なアトリエを構えていることが挙げられようか。
2026年10月24日刊行『ゲンロン19』

東浩紀
1971年東京生まれ。哲学者、ZEN大学教授。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』、『訂正する力』、『平和と愚かさ』など。




