特集 あらためて、日本

2026年10月16日

 『ゲンロン』は2025年末で創刊から10年を迎えた。それを期にリニューアルを図ることにした。

 リニューアル第1号の特集には「日本」を選んだ。じつはゲンロンは幾度もこの主題に挑戦している。『思想地図β3』は「日本2・0」を掲げていたし、『ゲンロン1』の特集は「現代日本の批評」だった。その意味では原点回帰だ。

 巻頭には、筆者自身の特集導入を意識した論文、続いて空海や折口信夫や平田篤胤をめぐる座談会、さらに若手研究者による儒教の現在についての論文を配置した。まとめて読んでいただければ、3者の内容が呼応していることを理解していただけると思う。ここまでがいわば思想パートだ。

 続けて芸術パート。こちらには建築家・原広司をめぐる座談会、藤子・F・不二雄をめぐるエッセイ、九州で苦闘する若手アーティストによる現代美術論、「うつわ」にこだわる美術作家へのインタビューを収めた。編集過程では意図しなかったが、結果としてそれぞれの文脈で芸術家の居場所が議論されたものになっている。社会から離れた人間がどのように社会と関係するのか、そのありかたについて考えることこそが日本文化の核心なのだろう。

 創業から16年、『ゲンロン』創刊から10年。そのあいだに国内も国外も大きく変わった。論壇やSNSでは、日本論というと怪しい、ネトウヨだ、そんな警戒感がいまだに通用している。筆者もよくネトウヨだと批判される。しかしこの国に日本の歴史を引き受けて思考している人々が多数いる、それは疑いのない現実だ。本誌はその現実から出発したい。

 本特集には、そのような狭隘な政治性から離れた、しなやかな日本論を再起動するためのヒントを並べたものである。ナショナリズムや排外主義と言えばなにかを批判した気になる、そのような思考停止からこそ抜け出したい。

2026年10月24日刊行『ゲンロン19』

東浩紀

1971年東京生まれ。哲学者、ZEN大学教授。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』、『訂正する力』、『平和と愚かさ』など。
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