指先から考える──導入のための短い会話|森脇透青+布施琳太郎+石橋直樹+植田将暉

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2026年3月13日刊行『ゲンロンy』

 

植田将暉 特集「帝国をつくろう」は、うっすらと2部構成になっています。まず第1部として、森脇透青さんと布施琳太郎さん、石橋直樹さんの論考があります。それに続く、大崎果歩さんのエッセイからが第2部です。座談会「新しい帝国とその時代」に、五月女颯さん、伊勢康平さん、李舜志さんの論考が続き、ユク・ホイさんの横断連載で締めくくられる。

 ただ、これはけっこう謎めいた構成です。帝国についての特集なんだ、きっと歴史や国際政治の話がされているにちがいない! と思って読みはじめると、冒頭では森脇さんや布施さんがどういうわけか不思議なアート作品を分析している。なんだこれは……と思いながらさらにページをめくっていけば、石橋さんが、江戸の国学者が描いた天文図を怒涛のいきおいで紹介しはじめる。

 なぜ帝国論で陰謀論や天文学が取り上げられるのか。歴史や国際政治を考えるために、どうして指先や図像について考えないといけないのか。これは最初に補助線を引くべきだなと思いました。というわけで、第2部については別で座談会があるので、ここでは第1部に論考を寄せている、批評家の森脇透青さん、アーティストの布施琳太郎さん、そして国学思想が専門の石橋直樹さんに集まっていただきました。

森脇透青 ぼくと布施さんが注目しているのは、《Qウェブ》という作品です。これをつくっているのは、ディラン・ルイス・モンローというアメリカのアーティストで、かれはおそらく陰謀論的な世界観の持ち主であり、それをアートとして示している。

布施琳太郎 ひたすら固有名を矢印でつないでみせたマップなのだけど、アトランティスから、悪魔やFBI、トランプに北朝鮮まで、ありとあらゆるものが結びつけられていき、それらの全体から「隠された歴史の真実」の流れが見えてくると言うんです。

植田 ほんとうですか!?

布施 モンローとぼくは、ちがう世界観を持っているけれど(笑)、おもしろいのは、彼の手法がまったく異なる文脈の図とも結びついてしまうことなんです。

森脇透青

95年生。批評家。京都大学文学研究科研究員。専門はジャック・デリダを中心とした哲学および美学。批評のための運動体「近代体操」主宰。共著に『ジャック・デリダ「差延」を読む』(読書人)、『25年後の東浩紀』(読書人)、『批評の歩き方』(人文書院)。

布施琳太郎

1994年生。アーティスト。東京藝術大学大学院映像研究科(メディア映像専攻)修了。主な活動にプロジェクト「パビリオン・ゼロ」(2025/葛西臨海公園、コスモプラネタリウム渋谷など)、展覧会「150年」(2025年/豊島区東池袋)、個展「新しい死体」(2022/PARCO Museum Tokyo)、キュレーション展「惑星ザムザ」(2022/小高製本工業跡地)など。その他、ルーブル・アブダビ、国立西洋美術館、金沢21世紀美術館などで作品を発表。著書に『ラブレターの書き方』(2023/晶文社)、詩集『涙のカタログ』(2023/パルコ出版)。

石橋直樹

民俗学・近世思想史・文学。2001年生、神奈川県出身。論考「ザシキワラシ考」で、2020年度佐々木喜善賞奨励賞を受賞し、民俗学を中心に執筆活動をはじめる(論考はその後『現代思想』「総特集=遠野物語を読む」に掲載)。論考「〈残存〉の彼方へー折口信夫の「あたゐずむ」から」で、第29回三田文學新人賞評論部門を受賞。論考「看取され逃れ去る「神代」」(『現代思想』「総特集=平田篤胤」)の発表以降、平田篤胤を中心とした国学思想・儀礼を専門に研究を進める。編著『批評の歩き方』等々に寄稿。

植田将暉

1999年、香川県生まれ。早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程。専門は憲法学。おもな著作に、「21世紀の「自然の権利」と大地の人類学」(『文化人類学研究』25巻)。ゲンロンでは編集と企画、ウォッチなどを担当。メディア研究者の山内萌とYouTube番組「今週の人文ウォッチ」を好評配信中!
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